詩人:望月 ゆき
コンクリートの丸いもようは、踏んじゃだめよ
って、
しあわせになれないから
って、
きみが言ったとき
さっき
二度ほど踏んでしまったぼくは
ちょっと泣きそうになって、あわてて
声をだして笑った
丸いものが好きだと言うきみに
ビー玉をひろってきて
いくつもいくつも、あげた
きみはそれをテーブルの上に置いて
いつも眺めて微笑んだけれど
それはいつもテーブルの上にあったので
やがてきみに忘れられた
ぼくが何度 きみをひろってきても
きみは じっと、
ひとところにはいないので
いつまでたっても
きみを忘れることができない
ただしい距離で、世界が見渡せる
そんな気がして
丸椅子にすわって
ガラスのない窓から
空をみていた
午後
あしもとからわきあがる
発泡性の、さよなら
天井にぶつかってはふりそそぐ
丸いしずくが
ビー玉に似ていて
ぼくは、また
それを ひろいあつめる