詩人:望月 ゆき
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか
すくなくともわたしは
あなただけを待っていました
ピリオド、のようなものがそこいらじゅうに
点在しているような、夜でした
ずうっとここにすわっていたのに
スタッカートではずんで、あなたは
おとといの晩
わたしの頭上を飛びこえて、今では
4小節ほど先の未来を生きています
西の空から伝うメトロノーム
かすかに、でもたしかに、振動する
あるく速さでね、
って
もどかしく背中をふるわす
そうして、4小節先の未来にいるあなたに
いつまでも、追いつけないまま
ピリオド、のようなものをつなぐと、それは
星座のようなものになり
あしたになったらあなたが
アンタレス辺りにきっといるよ、と
それだけ告げると白く消えていきました
やがて
五線譜のかなたから明けてゆく
レース模様の、朝