詩人:望月 ゆき
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
指先をすこしひたして
ていねいに
波のチューンを、あわせる
わたしたちに それから、があるとしたら
どこに続いているだろう
夏のはしっこを、ちらり、めくって
見えるものは、なに
わたしはそれだけを知りたがったけれど
あのひとはただ
困った顔で笑った
風は方向性をおしえない
今はまだ、空の底
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
手をふりながら
波のような周波数で
さよなら、を くりかえしていた
雲が、高いところを過ぎてゆく
空の底で
わたしは まぶしいくらいに子供だった