詩人:剛田奇作
うつくしい
今となっては
さざ波のような 記憶
子供の私は 何かを感じて
無言のまま 窓の外を見た
嫌い 傷つけ 笑い 泣き、それでも愛し
揺れ動く景色のなかで
どんなに激しいと思えた感情も
遥かな時が経ち せせらぎのように
粉雪のように
しづかに胸に降り積もる
大人の私は
それでもあの頃と変わらない
思慕に
原点をもとめて
去っていくあの方々を
祈り、慕う
どうか お元気で
ありがとう
この世の うつくしさに
涙しながら
私は消えていく
生まれる前
遥か昔に始まった物語
意味なんて つまらない言葉の存在が憎く
壊れたギターの埃は そのままに
何十年も変わらず私を
待っていた
あの頃はそのとうとさも
知らぬままに