詩人:望月 ゆき
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分の体で過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆらゆらする青の輪郭が
あのひとをあぶりだして
とたんに わたしは、また
ひとりと半分になってしまう
子午線を、ひとりで越えるのがこわくて
昨日から見つからない場所で眠る
このごろは いつも
あのひとがよく話してくれた
行ったことのない砂漠の夢をみる
眠っているとき
輪郭のことは忘れていられた
朝が来ると
ひとり分の朝食をつくる
カレンダーは いつのまにか
夏を終えようとしていて
輪郭は、それを知らない
窓ぎわ
逆光の中に立ち
すんなり伸びたあのひとの輪郭の影に
わたしの影を重ねてみる
そうやって ときどき
ひとりになる練習をする