詩人:地獄椅子
おいでよ。
こっちにおいで。
よしよし、おまえはいいこだ。
ほら、えさだぞ。
どうした。
なんでたべないんた。
だいじょうぶ。
どくなんてまざってないから。
おれをしんじろよ。
しゅじんのめいれいだ。
ぜったいふくじゅうだろ。
うまいんだぞ、これ。
そうだ、いいぞ。
たくさんくえ。
おおきくなれよ。
そしてやつらにかみつけ。
おまえはいいこだ。
かわいいこだ。
こんなになついて。
いうこともよくきいて。あのひとがたべのこしたうそ。
なげきたいこともないなげき。
なあ、おまえのこうぶつ。
もうまっしぐらだよな。
おいでよ。
こっちにおいで。
おいなくなよ。
そうだ、あのつきにほえろ。
まよなかにあばれろ。
おまえにはおれがいる。
ひとりじゃないからな。
おまえのためにとくべつ、ぴあのをひいてやる。
おとなしくきくんだぞ。
やさしいねいろが、ほら、おまえにもきこえるだろう。
せつないいのりが、ああ、おまえをいやすだろう。
しずけさにとけて、おんがくのうちゅうはひろがって、みりょうするだろう。
すべてのいのちのはかなさに。
うつくしいせんりつをかなでて、ゆったりとしっとりと、おまえをじゆうにするだろう。
ほら、みてごらん。
さっきまでのかなしみが、ふしぎとやすらぎにみちてゆく。
せかいはひろいんだ。
どんなにこうやをかけても、だいちはつづくんだ。
どきどきするだろう。
わくわくするだろう。
だが、いまのおまえは、あまりにちいさくてよわい。
まだそのときにははやいんだ。
おいでよ。
こっちにおいで。
よしよし、きょうからおれが、おまえをかってやる。
いいな、くろ。
ずっといっしょだ。
ずっと…。