詩人:Ray
ある日 小さな小人が
僕のところにやってきて言った。
『ねぇ
どうして大人達は
いつもぎこちなくしてるの?
笑って話してるのに、
仲良しじゃないの?』
僕はぎくっとした。
小人はいつだって
人間のいろんな部分を
よく見ている。
『これから仲良しになるんだよ。
だからまだ今はみんなぎこちないんだ。』
僕は答えた。
『…ずっと一緒にいてもずっとぎこちなくしてる人間もいるよ?』
とさらに鋭く問う小人に
僕は重ねて
『そういうことってないかい?』
と尋ね返した。
すると小人は笑って
『僕らの世界では
みんながみんな、
誰に対しても
“ありがとうの気持ち” を持ってる。
だからぎこちなくなることなんて絶対ないよ!』
頭が真っ白になって
何も言葉が出ない僕に
小人は
『人間の大人達には
“ありがとうの気持ち”を持ってない心が多いんだね。』
『…そんな大人達を
どう思う?』
おそるおそる、僕は聞いた。
『かわいそう。』
そう言って、
泣きそうな顔を見せながら
小人は去っていった。
あぁ、また一人、
人間の世界を哀れむ小人が増えてしまった、と、
落ち込みつつも
僕は
ぎこちない大人達の
集団の中にまた紛れ込んだ。