詩人:望月 ゆき
低いオクターブで
朝を告げながら
高いところを
水が流れている
知らないあいだに またひとつ
季節をまたいでしまった
雲と空に距離が生じてゆく
そのすきまを
縫いながら、通過する
白く細い、機体の
声なき声
目に映らないものばかりが
ほんとうのことのような気がして
耳をすます
すると
空と雲の距離を、はかることができる
水面に反射する光は
ニセモノみたいに まぶしい
未来の方角へと
ゆっくりと、たえまなく流れている
あの、暑い日
飛んでいった白い帽子が
その川の向こう岸にあることを
知らないまま
からだのすべてを
耳にして
深い深い底から
それを眺めている