詩人:甘味亭 真朱麻呂
笑って怒って泣いて頼って突き放してみたりする日々
何度僕はそんなふうに君を困らせんだろう
強がっては弱気になってみたり必要な時だけ君を呼んだり
何度僕はそんなふうに君を傷つけるんだろ
「愛してる」って僕からはじめたダンスなのに勝手なもんだよな 僕から手を離してしまったんだよ
雨音のダンスがまるでステップを踏む恋人のように見えるのは昔の君との楽しかった思い出を忘れられないからなのか
僕は売れない失恋家
ふざけた言葉を街に落書きするように
飼い慣らされた犬のように決められた自由の中で窮屈な靴を履かされて絶え間なく流れる好きでもない音楽を聴かされながら笑う ばかだよな
ほら月も笑いこらえられずついに笑ってら
ちょっとムカッとくるけど今夜はゆるしてやろう
感謝しな ムーン
嵐の海をわたる船のようにグラスの中でブランデーに浮かんだ氷が揺れているウイスキーの海に溶けて小さくなる
僕と君の恋のように
幸せだった時は短くやがて小さくなる氷のように割れることもなくひどく静かな閉幕をむかえた
それでも 僕は
何度だって
泣いて笑って頼って…繰り返し繰り返す
誰の前でだって変わらないまなざしで振る舞ってみせる
まるで君への当てつけのように
ほら何度だって笑って泣いて生きていける
心にうそをつけなくたって涙でぐしゃぐしゃの表情が説得力のなさを象徴していたって問題なしさ
やがて静かに君という雨は心の中でやむだろう
そして濡れた僕という傘をしまい陽射しの下へと歩いていける
傘はいつかは乾くからそんな悲しい思い出があったことさえ愚かな僕は記憶から除外して
雨粒がほらバンパーを濡らす
君の面影が悲しい幻になって天井をスキップしながら踊る
忘れようとしても忘れられないから
僕はそれを偽っているだけ
今も消えない雨音がザーザーと鼓膜を震わす。