詩人:望月 ゆき
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄りかかってすわる
ほんとうは 誰かが
ノックしてくれるのを待ってる
届いたダンボール箱には
枝豆によく似た過去が入っていて
まだとりたての匂いで
枝にぶら下がっている
それを一つ一つ
ハサミでちょん切っては
泣いた
今日も
ドアはノックされなかった
枝から切り落とされた過去は
ところどころ
虫に食われていて
もう、食べることすら出来ない