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[140019] 虚無の部屋

詩人:甘味亭 真朱麻呂


黒い観覧車が僕の部屋でキリキリ錆びた音を立てて回る
部屋の外では一日中黒い虹が空に架かっている
止まった時間が虚無の部屋には行き届かないから観覧車は回ることをゆるされる
唯一この部屋にだけ時間は存在する
だから観覧車は回る
それが時間が流れているあかし
動いているものがそれをおしえてる
犬は餌を恋しがらない
猫もこたつで丸くなることもない
時が止まった世界では生き物は生き物としての活動を停止する 血も流れないから死ぬこともないという本当の不老不死
時の止まった世界と動いている世界の狭間で僕は止まったりせわしく動き回ったり忙しい
身体の半身は止まっていてもう半身は動いている

そんな日々の中で
時間は今も僕をいつか終わりへといやな音を立てて虚無の中へ虚無の中へと追いつめる
逃れられないから
一歩ずつ一歩ずつ毎日気づかないあいだに少しずつ死に近づいてる
死という恐怖
そして
生という恐怖
両方を天秤に掛け右手には涙左手には笑顔
不死鳥のように振る舞うけどいつかは僕にもそんな日が わかってる

ジョークもジョークに聞こえない

ただそれまでの時間を人は与えられた恐怖という感情を理由にふるえている ウサギのような赤い目で喜びを見つけてはもみ消そうと計らう
なぜ始まりなぜ終わるのか この時間はなんなのか意図が分からない 論理的な思考では神の意図は読み取れない
そんな論理的な思考さえ神の手によるものだからわかるはずはない

ただ1つわかるのは自分自身は虚無の生んだもろい石膏だということ
水滴のようなはかない命を手のひらに集めながら僕は祈る
どうか世界にもっと幸せが降るように
色をはがせば汚いモノクロでも鮮やかな皮をかぶったペンキに笑うよ
風船は割れる
つくり話もアイデアもいつかはつきる
形をもった永遠はない、つまりそういう事。

2009/02/15 (Sun)
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