詩人:望月 ゆき
あやつられる
わたしの背中に糸が生えている
よく見ると
足からも
腕からも
糸が生えていて
どうにかすると口がパクパクする
声だけが違う場所にあって
伝えることができない
ことばを持たないわたしのからだに
五指からのびた糸が
複雑にからみついて
ほどけない
指がとまって
口がぽかんとあいたまま
涙も流さずに
泣いた
あやつられるわたしは
まるで
生きているかのように
表情がかわる
笑い顔の裏側には
たいてい泣き顔があった
色づく季節を見上げても
首をかしげて
声にならない声を揺らすだけの
カラクレナイ
カラクレナイ
からくれない
誰にも たとえ
愛しいあのひとでさえも
生きていないかのように
生きているわたしにも
伝えたいことは、まだ
たくさんある