詩人:望月 ゆき
国道沿いのマクドナルドで
あなたのシルエットを買った
伝えたかった言葉で
支払いを済ませる
足りなかった文字が、あったような気がする
4時限目の鐘が
モノレールをつたって、とどく
屋上の手すりから
遠い約束がこぼれ出るときの音に
よく似ている
あのころ、ふたりで
美術の授業をサボっては
給水塔の壁に落書きをして、笑いあった
しりとりのような
淡いつぶやきの その中に
足りなかった文字は
あったのかもしれない
となりに並ぶ影の、あなたは
いつのまにか 背が
ずいぶん高くなっていて
もう、わたしとは
視界がちがってしまった
発しているであろう声も
ところどころ穴があいていて
聴きとれない
鐘の音だけが、わたしにかさなる
伝えたかった言葉を払いもどして
歩きはじめる
午後へ向かう気圧に押されて
前のめりになりながら
いつまでも
きりんの「き」だけ
思いだせない