詩人:甘味亭 真朱麻呂
僕のはき出す声はただの音だから誰にも届くことはなく
誰の鼓膜もふるわせることはできない
まるで石のように僕のムネの中にずしり重くのしかかる
悲しみは波のように揺らぐばかり 繰り返すばかり
喜びもまた波のように揺らぐばかり 繰り返すばかり
そんな日々の連鎖に退屈してたえきれなくなって死にたいとほざけどいつまでも千切れそうな生への執着心をはなさない
僕は飛び立つツバサも地面を駆けるヒヅメもなにもないままで生まれてきてしまった裸の羊
たとえ僕の明日が僕を嫌いになっても僕は明日を嫌いにはなれない あとをつけるように僕のほうから明日に向かうから
こたえが見える日もそんなに遠くはないさ
頭のなか無数にある神経さえとぐろを巻いてるもののピアノ線のように背骨はまっすぐ空に向かう
最後の手段さえ石と化してもかならずどこかに突破口はありすべてが白紙になることはないさ
明日がどす黒く染まってもどこかで僕と同じ痛みを持つ人がいてみんな嘆いてるんだ そう思えばこんな痛みなどどうということはない
聞こえるその声が
聞こえたその声が
僕を導いて
暗闇から抜け出せる出口へいざなう
聞こえている声に
聞こえたその声に
僕は導かれ
悪夢から抜け出す方法を知るんだ
帰る場所はきっといつまでも悲しみが待つこの世界 この部屋
されど喜びが暗闇に沈む僕に手を伸ばす
永久の闇に沈みきるまでは僕を何度でも暗闇から救い暗闇へまた落とす
そんな意味のないようなことを繰り返してる
見えない影に突き動かされる身体
手にした運命に嘆いたりそっと物陰でほくそ笑んだり 様々に人は生きてそして終わってゆく
身構える私
気をゆるす私
途方にくれる私
いろんな私がいろんな気持ちをかかえて絶え間なく打ちつける波にたえて生きる日々
我慢の極地も限度もかるく超えていた。