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詩人:右色
辿り着きたい場所がある
僕の見ている景色の先には
とても柔らかい空気が流れる場所がある
時折僕はその場所に立っていて
未だ取り残されるように立つ「僕」を見る
「僕」は僕の視線に気付きながらも
いつも顔を背ける
すると
だんだんと
僕は
言い様の無い罪悪感と共に「僕」に戻る
僕は僕の求める
その場所へ
辿り着く道を知っている
それは恐い位幸せなことだ
しかし
僕は目を合わせることが出来ない
僕が願い
僕が進もうとする
その場所に
既に
そこに至ることが出来た僕と
未だに目を合わせることが出来ない
辿りついた僕が
一体どんな顔をしているのかが
それを
見るのが堪らなく恐かった
でも
何かが終ろうとしていた
ある夜に
偶然、僕は「僕」と目が合って
初めて気がついた
なんてことは無い
その場所に辿りついた僕はその先にいる<僕>に
やっぱり顔を背けていた
だから僕と「僕」は目が合った
僕は仕方の無い臆病者で
歩くのだって
不安で不安で堪らないから
とても遅い
それは
時間の流れよりも遅いから
ともすれば
進んでいるかどうか分からなくなるけど
でも
だからこそ
ゆっくりと
確実に
その場所まで歩いていってやろう