詩人:リコ
水が
ぷちょんと
垂れる音
台所の蛇口から
一回だけ
3分間の水時計
何故か
5分かけて
流れる
音も立てずに
とくとくと
繋らない水と水
きっとこれは
何かの知らせ
僕の心の中
ビリジアン色した池に
ぷわんと広がる
絶えない波紋
赤い液体では無くて
透明に澄んだ飲み水が
ゆっくりゆっくり
垂れ落ちていく
目を瞑って
そんな空想を
水達から貰った
東京の水は
飲めたもんじゃないけれど
洗い流すには
打って付けだ
水時計
かなしばりみたいに
歪んだまま
止まっても
紫の液体の入ったガラス
割れてしまうまで
彼の名は水時計だから
―東京の水は
ひねるだけじゃ
飲めたもんじゃない
僕を
洗い流す
ためだけの
水
贅沢だけど
たっぷりと
使わせてもらうよ
ビリジアン色の池を
透明になるまで
薄めておくれ
その途方に暮れる様な
一滴一滴に
絶望などしないから