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詩人:望月 ゆき
1.
かみさまはいるよ、
って 教えてくれた人は
もうすぐ死んでゆく人だったけど
それは黙っておいた
だって、あいしてるんだ
2.
きのう、かみさまを見かけた
高速道路を流れてくテールランプの中だった
ような気もするし、
公衆便所で流した水の中だった
かもしれない
とにかく
そんなふうに流れてくものの中に
3.
ああ、かみさま
あなたになら理解できるだろうか
この世界に拡散する、
声なき叫び、
文字なき手紙、が
4.
すべてのひとがしあわせになる
なんてことは
たぶん、ないだろうね
かみさまだって、居場所くらい
確保しときたいだろう?
5.
のどあめの中に、ぽつんと
気泡が入りこんでたら
そこんとこにたいてい
かみさまはいるんだ
だからって
口に放りこむ前に
いちいちたしかめたりする必要はない
6.
かみさまは
容易に虹を渡ったりはしない
行ったり来たりしてるときは
献立を迷っているか、
おしっこしたいか、
どっちかだ
7.
「かみさま(が、いるとするなら)!」
「かみさま(が、いるとするなら)!」
って、何度でもおいのりしてごらんよ
かみさまがカッコの中身まで見ていたとして
それが聞き入れられるかどうか
それはかみさまだけ知ってる
8.
星の砂を信じてる人のとなりには
かみさまがいるんだって
9.
うそをついたこと、知ってるのは
わたしと
あのときたまたま近くを通りかかった
かみさまだけ
10.
だって、あいしてるんだ
そればっかりはかみさまにだってどうにもできない、
ってことがあるってこと
ちゃんと知っているから
だいじょうぶ
かみさまがいても
いなくても