詩人:望月 ゆき
送電線の下をくぐって
アスファルトの海を
ぼくたちは、
泳いで、
はりめぐらされる
緯度や経度に
足をとられながらも
ひたむきに
日帰りの旅をくりかえす
ねむる前、ときどき
アスピリンをかみ砕く
そんなふうに つかの間
痛い場所を忘れる
限りあるこの世界の
底で
明滅する、リアル
まぶたの奥でくりかえされる、その
呼吸音の記憶をたよりに
あしたの方角を
さがす
泳いで、
ぼくたちは、
息つぎのしかたを思いだすために
何度でも、生まれる
いつか 散っていくまで
砂時計を反しながら
泳いで、
いつも
季節だけがそれを越えて
まぼろしみたいに、遠ざかる