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詩人:甘味亭 真朱麻呂
まんまるい満月がなにもない空を流れて
僕の部屋の窓辺光をさして 照らすよ
僕はそれを喜ぶ心さえない汚い人
美意識もない
僕には光は要らない
似合わない正義の味方は
ヒーローのマント無言で破り捨てて
仰せつかった使命は僕には向かないよ
満月よ 僕の部屋など照らすな
暗闇の中 僕はそれでいいから
満月が 僕の部屋をそれでも照らす
涙で前が見えない やさしさが胸を切り裂く
満月よ なぜに照らす?
満月よ なぜ僕なんかに優しくするの?
なにもできない無力な僕なんか無視してほかの人を照らせよ
なんだかうれしいけど同じだけせつない夜
僕はそこにいた
ヒーローはヒーローでも僕なんかばかなヒーロー
自分ひとりが悲しいと思ってるのに罪悪感もない
悲劇の悲劇のヒーロー
それなのにそれなのに満月は今夜も僕を優しく照らす
やさしさは誰のものでもないのかい?
平等かい?
でも僕にはあまりにもったいないよ
ヒーロー…
ヒーロー…
満月よ 誰かひとりでも幸せにしたい
ゆるしてくれますか?
いつまでもいつまでも消えない傷跡
それでもちょっとだけ笑ってもいいですか?
誰かを愛してもいいかい? 本気で…
今夜 君の下を歩くからその足元迷わないように照らしてくれ
君の家まで着くまででいいから…