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詩人:浮浪霊
あたし、牧岡黎都(リト)は十矢国(ハンガリー)に留学中の大学生である。
母方が十矢国人であるあたしには現地に数人の従姉妹がいる。
彼女達は日本文化にも興味を持ってくれていて、十矢国人には珍しく姉様(ズィーヤン)のような中国人にも偏見を持たずに接してくれる。可愛い連中だ。
さて、今回は我が母国のソフトパワーが遠く没日郷(ヨーロッパ)まで征服し土人どもを大和言葉の学習に駆り立てる過程(プロセス)をドキュメントしようと思う。
五年ほど前の事だ。
とある週末、あたしは自宅で従妹淳 (アーグネシュ)の来訪を待ち……我々は親類仲がいいのである。。。ルンルンと料理をしていた。
適当に買い込んだ適当な食材を適当に料理して適当に味付けし来訪者に毒見をさせるのだ。あたしの創作料理群は友人たちに共産鍋と総称され、美味い事もあるが悉く再現不能である。一度各種野菜のバニラコーヒー煮込み一週間分ができたときには流石に焦ったが、私は餓えた友人に事欠かないので没問題であった。空腹は最高の調味料である。む、可愛い従妹の気配。
ピンポーン。
ガチャッ。(ニコッ)「いらっしゃい、淳」
(じろっ)「来てやったぞ」(ズカズカ)
「……」
「ああいい、言わなくてもわかる。今日も可愛いってんだろ? いいだろこのコーディネート。○×△っていう高麗(コレア)人スターのスタイルなんだぜぇ? ああそうそう、今日わざわざ来てやったのも高麗関係なんだよな」
「……お前仮にも日本人を従姉に持ってるなら韓流ドラマばかり見てないでたまには日本のアニメでも「やい黎都、お前日本人なら当然高麗語も話せるだろ」
「話せねえよ!」
(物凄い失望の表情を浮かべながら)「(チッ)話せてもよさそうなもんだ……」
「なにその思考の短絡!? 勘弁してよ!」
「じゃあもう日本語(ヤパーン)でいいから教えろよ」
「何様ッ!?」
「似たようなもんだろ?」
「韓流ファンに有るまじき発言だなおおい!?」
共産鍋は好評であった、食中り起こして死ねばいいのに。
ところで彼女は瞬く間に日本語がぺらっぺらになり(ぶっちゃけ今やあたしより上手いんじゃないか?)、最近ではSkypeを使って韓国人の美青年に日本語を教えているらしい。
や、奴の目はハンターの目だぞ! 美青年よ逃げるんだっ!