詩人:どるとる
何も知らないということは幸せなことだろうか
何も知らないということは不幸なことだろうか
僕らは知らなくてもよいことを知っているわりに
知らなくてはならないことを知らない人が多すぎる
僕は一体あなたの何を知っているのか
あなたは一体僕の何を知っているのか
ひとりの人の心さえわからないのに
万人の人の心を理解できるはずはない
それでも無知だからこそ僕らは割合人間らしくいれるのかもしれない
すべてを知ってしまったら神様と同じ位置に並んでしまうから
知らなくてもいいことは知らないまま
僕らは 無知なままでいよう
遠い異国で死んだ同朋や
しばらく会っていない知り合いの死
無知なままでいればどんな悲しみでさえ 涙には変わらない
無知なことも案外 利口なことかもしれない
無知だからこそ僕らは 今日起こるであろう悲しみや苦しみになんのおそれもなく突き進んでいけるのだから
無知とは考えようによっては 幸せなことでもある
例え目の前に見えない槍を突きつけられていようとも突き刺さるその一瞬まで僕は笑っていられるから。