詩人:さみだれ
過去に住むお姫様は
慣れない言葉を繋ぎあわせて
お城の庭に埋めました
一年後には芽が出ましたが
お姫様は見ることができませんでした
未来に住む紳士は
落ちた懐中時計を拾おうとして
小さな木の下にしゃがみました
すると太陽がにこりと笑いました
紳士は小さな木の向こうを見ると
なぜだか幸せな気持ちになりました
永遠に住むホビットは
どれだけ待っても大きくならない木を不思議に思って
泉の女神様からいただいたお水を与えました
月がにこりと笑って
大きくならない木は声を覚えました
それからは毎日ホビットと木は歌を歌いました
一瞬に住む王子さまには
友達がいませんでした
不憫に思った召し使いは
お城の庭にある木のお話をしました
王子さまは興味津々に庭へ行って木に語りかけました
"僕には友達がいないんだ
とってもさみしいんだ
ねぇ君は歌を歌えるんだよね
僕と一緒に歌ってくれる?"
ざわざわ、と青い葉が音をたてました