詩人:高級スプーン
夜
溺れて沈むのが
怖いからと
気付くのも
嫌だからと
泳ぐのを
楽しもうとする魚
感覚外の刺激から
逃れに逃れ
水槽の中
見渡す景色も
慣れに慣れ
ふと過る無に
消されまいと
忙しなく巡る
行き先も後先も
考えずに
バタついて
零れる笑みの下
広がる隈は
悩みのタネが
刻んだシルシ
廃墟のような闇に
星は煌々と踊る
魚は睨む
一寸先の憧れを
どうしようか
まず泳ごうか
楽しめないし
苦しいし
早く
終わらせてくれないか
少し遠目で観ると
映える失意が
泳げ泳げと
急き立てる
魚は夜を泳ぐ
刀は人を斬る前に
空を切り裂く
分割された一コマに
幸せをどれだけ
詰め込めるかな
さぁどうだろな
とりあえず泳ごうか