|
詩人:カスラ
夜:
彼女のダイアモンドを散りばめた黒貂のドームは
光年の彼方より来たれる私の星屑を溶かし去った
夜は私を胸に抱きしめその炭素の黒を広げ
時を超え私の内なる縦糸を引き絞る
私に『光』・『言葉』を与え 私自身が彼女に他ならないことを教え示し
疑問の内に閉じ込めたまま東へ向かえと命じ
私の夜明けのために天空を創り出してくれた
私は泥足を洗い 白い烏に従い 乗りつけたのは黒い森の入口
白い烏はプラトンの蔦の絡まる醒めた目で
存在や天体の真実を捉えようとしていた
かたや道化達は無意味なゲームを次々と鋳造し
オウムの衣装で嘲笑いジョークを飛ばす
※二人の女が現れ泣いている
マダムバタフライは突然
の芝居じみたガラスの涙を流してみせ
一方夢の闇ではクイーンビイーがあらゆる人類の痛みを知る
風 火 地 水
天秤上の世界
過 現 未 虚
変転の釣り合い
その釣り合いの上に在る世界で
大僧正らは審判の刃を振るい 名も無い墓碑に『信ぜよ』と刻む
かたや強欲亡霊女らは灰と砂とを溜め込み
奴隷らを鎖で縛り付け
焚き付ける言葉に怯え逆上し 祝宴を潰そうと立ち上がる
一方 独りごちほくそ笑む狂人には全てがどうでもよいこと
計量ナイフを研ぎすますため 賢人達の投げ放つ礫は はからずも流血を招き
クイーンビイーはその卓見故に眼が利かず
生を怖れては早々と死を捉える
かたや子供らは打ち込まれた釘の意味を悟れる時までドグマの前にひざまずき続ける
全てのその一方で 我等の母なる大地は均衡を保ち待っている
今 黒い森に迷い込み分け入った人々の頑なな自我とちっぽけな肉体とが ゆらゆらと 溶け出してゆく
広大無辺の夢の時空へと溶け出して生成する夢の糸を紡ぎつつ
繰り返す物語を織り成しているその宇宙となり
夢見られている夢が
私と呼ばれている繭なのだ
…§…