|
詩人:漣福堂 九欒
その部屋は彼女の為に宛てがわれた。
照明は暗く、浮き上がるように、奇跡のように彼女は掲げられた。
人々は列をなし、彼女と見つめ合った。
真珠の耳飾りをきらめかせ、彼女も静かに彼らを見つめ返す。
彼女の静止した時と、眼前の流体たる時間が、
厳かな空間を紡ぎ出した。
ふと思う。
彼女はあざ笑っているのかと。
とたんに世界は歪み出す。
冷徹な微笑に、空間は凍り付いた。
そう、それは鏡なのだ。
彼女は何も思っていない。
彼女の瞳は心を見透し、
真珠の輝きは、心象を貫く。
彼女は今日も、微笑むのだろう。
人の世の水鏡という、残虐を真珠に秘めて。