詩人:マツカワ
スタートから僕は出遅れた
靴ひも結ばず走り出したあいつは
もう ずっと向こうの背中
自分のペースでいけばいいさと
靴ひも強く結んでみても
やっぱり気になる 景色がチラつく
いくつもの背中に追いついて
いくつもの背中に追い抜かれ
顔を合わせることもなく
言葉を交わすこともない
走ることを止めれば未来はない
他人のペースなど どうだっていい
誰もが そう教えられてきた
息切れ寸前の頭に思想などなく
走る理由も見出せない
振り返ることすら怖くてできない
さまざまな勝ち負けが存在し
さまざまな感情が混在する
心かよわすこともなく
ゴールなき道 独り走る
いつかの背中が座り込んでる
こんがらがった靴ひもに
自由を奪われ もがいてる
走ることに疲れた僕は
何も言わずに立ち止まり
固いひも靴脱いでみせた
馴れ合いなんかは好きじゃない
並んで走る気も さらさらない
だけど 裸足になった僕とあいつは
やっと 人生レースの面白さを実感していた