詩人:W
眠りを覚ます 足音が聞こえる 床を鳴らすいつもの音 貴方の重さの音 ああやっと帰って来たのだと 湧き出る歓喜が身体を潤す 褥の上
寝息は嘘で 瞼は閉ざし この顔にそっと触れた 冷え切った手 恍惚な手 もう私のじゃない 凍てついた光
確かに確かに 指を掴んでいたように お互いの先は見えていた筈なのに どこで狂ってしまったのかねぇ 今では 砂が零れるこの掌 他のイヌを連れて歩くくらいなら いっそ殺してくれと 言ってたけれど 失笑 できるわけがない 貴方は呟いたっけ やさしい私がすきだと 花に笑いかけて 呟いたでしょ やさしい私は 貴方を亡くすことも 痛みを与えることだって できやしない 決して できやしない
さ そろそろ ここを立ち去ってね 私 我慢できずに 目を開けてしまうよ それはダメでしょう?