詩人:甘味亭 真朱麻呂
なぜこの世界でいちばん好きな君のことを僕は傷つけちまうのかな
ほんとうをいえば今すぐにでも君に謝りたいのになぜか気持ちは裏返しさ
あの日 僕らは出逢っていつの間にか一緒にいるのがあたりまえになって
いつしか一緒にいない日なんかないくらい隣に君がいるのが日常になっていたのに
一緒にいても会話もなくてそんなんじゃいないのとなにも変わらないよ
それなら別々にいた方が幸せだと思うほどで
心の距離が永久にも感じたから僕らはもうおしまいだと気づいてしまった
この世界でいちばんに好きになった人ってもしかしたらこの世界でいちばん愛し合えない人でもあるのかもしれない
初恋はまるで人魚姫のようにおたがいが恋の正体に気づいた瞬間泡となって消えてしまうから
僕らがいくら愛し合っていたからと信じつづけてもそれは所詮終わった恋
悲しい過去
遠い思い出
地平線よりずっと彼方にある記憶
僕は今 ひとりきり
船を漕いでいる
名前だけの王子様
君は人魚姫だったんだね
そんなおとぎ話を継ぎ接ぎのように悲しい記憶にふたをする
もうこれ以上
涙があふれ出さないように応急処置をほどこした
それでも
それでもね
忘れられないんだ
ほんとうなんだ
だって君はいちばんいちばんに僕の心に光をともしてくれた人
忘れられるわけがないんだ
わかってるのに
でも君はもう憶えていても悲しくなるだけの人
それでも思い出は思い出すたびいつでも僕に優しく微笑む
だから思い出のひとつひとつ僕はたどるんだよ
忘れられないならそのままいい思い出に変えようと行方を追うように悲しい中に光を見つけようとしてる
人魚姫… 今もどこかの海を泳いでるかい?
その美しい瞳
変わらない心
誰かと甘い恋をしてるかい?
僕は君をうらんでなんかいない
優しさをありがとう。