詩人:甘味亭 真朱麻呂
いつもなら目にもとまらないはずの満月がひとつ今日はいやに傍にあるよ
ひとりぼっちだからかな
いつもなら大好きな人が傍にいてくれるから満月のわずかな光やあたたかさなど愛の比ではないから
気づかずにいたんだ
でも今は違うらしい
満月の大きさがその温もりがなんだかいやにありがたいんだ
そして僕の頬を流れ星のようにつたった涙がキラリ光ったならきっとさびしさは本当だと誰にもわかるだろう
言わなくたって満月にもわかるだろう
だから 満月よ
僕を照らして 願わくば悲しい記憶ごと燃やしつくして
やけくそなんだ
もう
しかたないんだ
屋根の上 浮かぶ満月と片手にはお酒
グラスの中でゆれる焼酎が僕の部屋を写し取るように美しい透明度で少しさびしさを満月より早く紛らわしてくれた
だめだな
焼酎なんかに負けてちゃ
満月よ 顔が立たなかろう
僕はクスッと笑ってしまった
悲しみはどこか飛んでしまった
満月よ はかったね
最初からこれが目的だったのか
満月は何も言わずちょっとつまらないから僕が翻訳する
「私は満月、
その名のとおり満月だからただ輝いてるだけ、輝いてただけ、その下にたまたま君が存在するだけよ」と満月は言ってると思う
このやさしいあかりからするとね
恥ずかしがり屋の満月はそんな言葉ではぐらかすんだよ
きっと本当はやさしいくせに
僕は笑って残りの焼酎をあおった
少し熱い焼酎の味が僕ののどを刺激した
また明日も君に会いたい
君に会いたい
せめて満月に
なくした恋人を思い出すような心地だから
その痛々しくも気持ちいい微妙な感じがまたいいのさ
だから満月よ
明日もそーいうわけで
どうかひとつよろしくね
僕は酔った頭で満月に言ったあと
深い眠りにつく
深い眠りにつく
あとは満月が空にあるだけさ。