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[177505] 重いドア

詩人:どるとる


夜の中に閉じこめられたままの僕は 独り何かを探していた

歩くのもやっとで 希望なんか見えなくて いやなことばかり考えてしまうよ

電気の消えた暗い部屋
窓の外の誰かの笑い声が象る幸せな様を羨みそして憎む日々

アパートの重いドアを開けて 冷たいノブを回して ただいまだけが独り言のように口からこぼれる
お帰りなさいは返らないよ

なにが悲しいわけじゃないけれど それなのに胸の中に 切なさがあふれているんだ
重いドアが後ろで静かに 下界との隙間を断つ 僕はその時 言い知れないむなしさに泣くんだ

ばらばらになった心のかけらを ひとつ残らず拾い集めて またばらばらになるのを知りながら雨の降る悲しみの中へ足を踏み入れる
窓の外に広がる暗い暗い夜を見つめたまま動かないこの瞳は見えなくていいものまでも映すよ

あのドアをそっと開いて 目もあけられないほどの光が僕を包む 朝に出会うまで
重いドアはけっして開くことはなく 物言わない鉄の塊になる
役目を果たすだけさ 僕が開けないかぎり重いドアは重いドアのまま 僕の心と世界の一切を隔てる

まぶたの裏の青い海を 泳いで 夢の岸辺から 現実の沖へ上がるまで 僕は目の前のありもしない幻と楽しそうに戯れるよ

そんな夜は そんな夜は流した涙を 取り戻すため どんな小さな喜びにも笑うんだ

心が身体より先に死なないように。

2012/07/27 (Fri)
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