詩人:甘味亭 真朱麻呂
さよならの日は突然におとずれた
あんなにも愛し合ったのにあまり悲しみが少ないのはなんとなくわかってたからさ
確か あれは 五度目の僕の失恋
いちばん思い出深い恋だった
いちばん君を愛してた 恋してた 本気で
もう悲しみきってしまったのになぜだか涙は性懲りもなくまたあふれ出す
駅のホーム閉まる電車の扉のまえ
小さくこぼした
さよなら…あまりに小さくって弱々しい風にもかき消された
本当はまたやり直そうと言いたかったんだ
だけれど言えなかった
言わなかった
無駄に誇り高いプライドが僕を縛り付けていた
こんな時だけ
さよなら …
その一言で幕切れ
およそ一年半と続いた短いような長いようなショーは拍手もなくおしまい おしまい
今 窓際 もたれかかり 昔のアルバム
寄り添いながら
映る 僕と君
懐かしくて
涙流れた
まだこの写真だけは
この写真だけは捨てられない
傷跡に塩を塗る結果とわかってても気持ちに整理がつかない
そして君のまなざしが 僕の罪をゆるしてないから
百年の恋 ならぬ
百年の罪
いやそれ以上の刑に値する重罪
僕はおかした
あの夏
今 僕は冷たいひとりぼっちの牢屋の中新しい恋の誘いにさえおびえただ昔の恋にばかり想いを集わせ凝り固まる心 まるで万華鏡
そんな思い出はやがて涙にもならないのにため息ひとつで切なさは十倍にも百倍にも膨れ上がる
あのホームの出来事
遠い昔 ひとごとみたいに見てた
涙々の青春上映
なんだか このまま最後の恋になりそうな予感すらする僕には大きな出来事
心の奥に鉛が沈むような心地
その重さになにも言えずにただ僕の両目は虚空をさまようだけなんです
この恋にタイトルをつけるなら
迷わず 「終わらない悲しみ」
そうつけるだろう。