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詩人:どるとる
ヤドカリの生活
雨続きの部屋 両隣の声が筒抜け
陽当たりは超がつくほど最悪です
…であるからして
安上がりのこの部屋
幽霊でも出るのかな
瑕疵物件ってやつですか?
ねえ ねえ ねえ
窓の向こうの景色はビルに閉ざされた景色
なんの趣もあったもんじゃない
で、気づいたんだよ
これはまさか幽霊のせいじゃない
幽霊も逃げ出すほどのただ痛い物件だったよ
一日中そんなダメダメな部屋でダラダラのらくら過ごしてる
万年床に寝そべり
歌う鼻歌
遠い昔の母の子守歌
よけいなことを覚える記憶力だけは長けている
僕は今
引きこもりという名の離島生活満喫中
避暑地ならぬ避人地
世の中から逃げてる
その途中 逃避行の日々
でもどこまで逃げたって帰る場所はこの汚いうえに趣も何もないこの部屋だけだ
そうさ なんやかんや言ったって全ては僕がしでかした過ちという名の結果さ
子供の頃からの無駄遣いの連続とそれによる数々の失敗談や面倒くさがりの僕が引き起こしたガタガタに崩れた未来の形
仕方ないさと
割り切って
しょうがないやと
笑い納めて
僕はこの場所で
自分なりに
改善と実験と実証を繰り返して研究してゆきながら少しずつマイナスをプラスへと持ち上げてゆくよ
今はまだかたい殻の中
だけれどいつの日かこの殻を破って孤独な夜にもさよならしてみせる
ひとりきり月見上げ引きこもりきり缶切り片手にキリキリと鯖缶あけてちびちび食べるきりきり舞いの日々にもさよならしたい
しゅわっと炭酸はじける缶ビールひとりじゃ味気ないね
夢は数あれどどれもこれも今の生活ではほど遠い夢
だけれどいつの日にか手にしたい夢
うつつに夢見て うつろに夢見て
寝て起きて 寝て起きて また夢見て
拝啓、巻き貝の中から未来の空を遠く近く眺めてる
自分見舞い申し上げます
今はまだでられそうにない。