詩人:番犬
街の路上で思ったんだ
靴底はどれほどすり減ったのかなって
街の路上で思ったんだ
ネオンがあんまりにも悲しかったから
街の路上で思ったんだ
退屈も怠慢も隣に置かず
街の路上で思ったんだ
孤独と俺の二人きりで
街の路上で思ったんだ
ゴミくずだらけの祈りに満ちた
街の路上で思ったんだ
月は全部を見ているのかなって
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
灰色に飛び散る冬の姿を
コンクリートの街の上空で見つけた
希望も情熱も失ったカラスが
風の吹かない街を飛ぶのをやめて
上空を見つめているのを見つけた
もうあそこには行けないのだと
諦めを浮かべたくちばしの向こうで
ぽとりと落とした宝石を
街の路上で思ったんだ
氷点下の冬に抱き合う相手は誰かと
街の路上で思ったんだ
そいつは肉体を持たないけれど
街の路上で思ったんだ
そいつだけは俺を裏切らない
街の路上で思ったんだ
今も隣で震えて凍える
街の路上で思ったんだ
孤独だけが俺の頼りだと
街の路上で思ったんだ
ネオンの虹がまた咲いてるって
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
慣れ親しんだ心地よい空気を捨てた奴の
安上がりなアクセサリーは売っても
媚びだけは売らないと決めた奴の
一歩踏み込んだ奴の足にブルースを
寒さに震える奴の心にバラードを
街の路上でしか見つけられない
そんな汚れたストーリーの主役達に
時代の影で忘れられてく悲しみを
続く