詩人:どるとる
悲しいことがあったんだよ
今日はそんなことはないと思ってたのに
油断していたよ
不意の石ころに気づかずつまずいてしまうように
悲しみって指先触れただけで涙が出るんだね ふしぎなほど
そして 今 僕のやわいハートにあふれる悲しみの水 浸水してしまうよ 悲しみの海の中に沈んでゆく
苦しいのはそのためかな
明日すら見えなくなる
今しか見えなくなる
悲しいことがあったんだよ…
こんなに辛いんだよ…
いくら言葉にしてみても孤独な僕には赤ちゃんの手すら差し出されず神も仏もない世界にひとりきりの夜が訪れそこにはただいつもの街の景色とつめたい風が吹くだけ
それが悲しみを引き立てる 余計なほど
ねえ
悲しいことが…悲しいことがあったんだよ
それなのに言葉だけはつねに誰かの助けを必要としていて
おかしいね 莫迦だよね
言葉にならなくなったら涙になってこぼれる それが人の感情の流れらしいんだ
泣けばすむなんてこれっぽっちも考えてないさ
そんな余裕なんてあるわけないさ
ただ涙はぶつかった出来事の差異であふれるんだよ
それを誰も解らずにただ平然といつまでも泣いてろなんて言葉で言い捨てる
真実をこんなに形にできるものはないのに
誰ひとり立ち止まらずただ誰もが泣いている人のまえを素通りする かまうことなく
そんな世界にいる自分がなんだかかわいそうでかわいそうで見てられず
僕は思うよ、涙なんて流したいときに簡単に流せるものじゃない
人は感情を操れるほど完璧じゃないのさ
それでも涙は切り捨てられ
それでも従順に尻尾を振る人たちだけが待遇され優先され
この世界は流れて続く
涙を流すばかりの人たちはどうすればいいかもわからず途方に暮れる
僕を含めそんな人たちをどう世界は救ってるの?
やっぱり翳りは拭えない
それが唯一自分を守れる盾だから。