詩人:高級スプーン
温く生きるフリに疲れ
眠れなくなる夜に
痛む頭を
脱がせる処方箋
1錠
2錠
3錠と
飲む量は
夜を更新する度
増える
首なしの僕は
仮想世界を彷徨う
よく似ていて
少しだけ違う人々が
集まる場所
笑顔を装い近付いて
即席の傷を見せ合って
埋もれないように
必死に傷口を広げる
お互いに自分へ
共感を持たせようとする
来る日も来る日も
狂ったように
無意味な痛みに
値段を付けて
自分達を
ブランドとして扱う
本物と偽物の
価値の違いに
差異はない
認めるか
認めないか
好きか嫌いか
その日の気分で
配置が
変わったりするだけで
実は
普段の生活環境とは
あまり変わらない
頭がないから
気が付かないだけで
気付いても
飲み込まないだけで
事実を仕舞い
魔法の瓶を取り出す
そろそろ時間だ
皆という
不確かな表現に
同化して
自身も記号に化ける
そんなある日
発した言葉が
僕の肩を霞めて
出遇ってしまった
疑問ばかり残す君に
その他大勢と
同じように
頭を外していたから
見えなかった
声も分からない
誰か分からない
触れた者を震わせる
透き通った言葉
仮想世界を
するりと抜けて
置いてきた
頭にまで響く
どんな気持ちで
誰に向けて
語ったんだろう
放ったんだろう
受けた瞬間
思い出す
繋がらなければ
解けなかったと
首なし達は
次々と姿を消した
直後
意識が戻る
ズキリと鈍く
重い痛みが
被る頭の内側を
走り回る
不意に
肩を掠めた
言葉が
根こそぎ幻を奪う
飲み込んでしまった
薬は
毒にもならない
畜生
僕は呪われた
君が頭から離れない