詩人:高級スプーン似
地縛霊になってしまった
わたしのたましいは
どのような経緯で
現世に思い止まったのか
丑三つ時
夜風に揺れる柳の下で
考えてみることにした
怨み辛みはあっても
肉体を捨てたあとまで
手放せない代物でもない
まだ生きていたかった
けれども
未練と呼べるほど
執着してもいないのに
どちらかと言えば
はやく
消えてしまいたかった
早々に諦めていたんだ
思い描いた最上の人生は
窓の外
生まれる前から
違うレールの上の人生を
走っていたし
やる前から
匙を投げていたので
すくえるものも
当然なくて
何も手に入らないと
祭りのあと
なくしたものを
探していたっけ
それも
すぐに諦めたけど
思い返せば
わたしって
最低だ最悪だ
最底辺に堕落するまで
何もしてこなかった
だなんて
なんてバカなんだ
まあ何を言っても
あとの祭り
今更遅いよ
そうやって
諦める癖は
どうやら死んでも
直らなかったみたいだ
笑えないし
涙も出ない
いつからだろう
いつからなんだ
低レベルな悪に
染まってしまったのは
始発から
生まれ落ちる前から
性悪だったのなら
運も悪かったな
最初からこうなると
約束されていたのなら
破る勇気は
どこに放り投げたんだ
思い返せば
打ち寄せる怒り
怨み辛みは己にばかり
そうか
わたしはわたしが憎くて
この地に縛られているんだ
嗚呼
バカも直らなかったとは
はやく
消えてしまいたい
強く思えば思うほど
どこにも行けなくて
誰かに祝福される前に
トイレに流された
きみに笑顔はなく
泣くこともせずに
わたしを見ている
諦めることも
出来なかった
無垢なたましいもまた
消化されずに
縛られている
そうだよな
最初から
汚れていた訳じゃない
手垢や糞に塗れていても
血塗れでも
それでもきみは
先天的な悪など居ない
悪いのは
何もしてこなかった
わたしじゃないか
きみと
しずかに目を合わせた
わたしは
あの世に行くことすら
諦めて
きみを見た
そして
生前のことを
思い出すのを止めた途たn