詩人:甘味亭 真朱麻呂
あの日僕らまだ幼くって考え方もおろかなほどやさしかったね
あれから時がずい分過ぎて季節を通り抜ければ人はだれも大人になる
僕らもまた大人になりました
小さな近所の公園の砂場で手もTシャツも泥だらけにしながら
戯れに約束したね
大人になったら私たち僕たち結婚しようねって
ゆびきりまで交わしておいて今の今まで忘れていたんだよ
あの約束はたしかにくだらない子どものでまかせだろうけど
叶いっこない約束なんだろうけれど
きっとそんな約束も僕の中ではたしかな真実と何ら相違なかった
まるで現実とはかけ離れた夢の中の話みたいな約束だ
だけれど大人の僕にはかけがえのない約束だ
ちっぽけな記憶の引き出しの片隅に追いやられてた僕のはじめての恋の習い事
ゆびきりひとつ交わした夕暮れ
あの日別々の心がひとつにつながった奇跡
真っ赤な夕空を背に真っ黒な二人のシルエットがひたすらに砂遊びするその様を映していた
今 僕はなぜだか泣きたくなった
この涙はきっと約束が果たされなかったことの悲しみじゃなく最初からそんなの叶わないとわかっていたからこその切なさとちょっとの君への思いが僕の中からはみ出したから
その涙だ
だけど僕はきっと忘れないだろう
あの約束は今や空の彼方 届かない記憶の果て
だけれどだからこそ忘れてはならない素敵な思い出
破り捨ててしまおうと少し裂いてしまった部分をまた縫い合わせ思い出をつよくつよく抱きしめる
僕の中のもう一人の幼い僕とゆびきりしてさ
あまりにも早すぎるあの気持ちは初恋というらしい
今 気づけば
あのころの僕ではわからなかったのが唯一の救いだね
だから傷は浅くすんだのでしょう
よかったのか悪かったのか
それさえおぼろげな記憶の残り火
自然に消えるまで待つよ
心地いい切なさ
抱きしめたまま
もう少し君とゆびきり。