詩人:はるか
後部座席に滑り込み
窓の外の景色を
見るあてなく眺めた
車が揺れるたび
肩先が優しく触れる
貴方と私の微妙な距離
もう
これで何度目かしらね
運転手は無関心を装い
ゆったりと車を走らせている
貴方も私も
答えは初めから出ていたわよね きっと
多分 悲しいくらい
貴方も分かっていたはず
自然に垂らした手は
重なる事をまだ迷っている
私は視線を正面に向けた
幾つ目かの信号を
やり過ごして
そして車は静かに停まった
降り際の
絡み合った貴方の目は
私が降りる事を許さなかった
慈しむ様に見つめる
貴方のその目が
とても好きだったわ
やがてドアはそっと閉じた
もう 振り返らない
私は溢れるものを抑える為に
瞼を閉じた
それでも温かいものが
頬を濡らすのを
遮る事は出来なかった
運転手は無関心を装い
車を走らせる
無関心を装い
車を走らせる・・・