詩人:香奈
あの子がくれた置物は
割れた赫い赫い
ハートの硝子
誰がどうして
こんな形に
デザインして
造ったのか
そんなの
くれたあの子もしらなくて
破片が危ないと
何度か思った
ママとパパが
良く言ったわ
あなたは愛されて
育つのよって
だけど
ねぇママ
愛されるって
どういう感じ?
だって
今はクマさんも
ウサギさんも
私の側にいないのに
今私の側には
紙で造った
黒ネコさんが
手首のキズに
キスしてくれるのです
いつでも目に入るように
部屋の中央に置いた
割れた赫い赫い
ハートの硝子
どうして
あの子はこれをくれたのか
全然知らなくて
ただただ
眺めていたの
時々手を伸ばして
触れてみたり
ママとパパに
怒られたわ
あんなものを
置いちゃ駄目だって
危ないんだから
捨ててきなさいって
だけど
ねぇパパ
捨てるだなんて
できないよ
だって
もらったんだもん
破片は確かに
危ないけれど
今も良く目に入る
飾った訳でもない
ただの置物
なんだか少し
目障りかな
ねぇもしかしたら
割れた置物
じゃなくて
元々は
ちゃんとした
ハートだったのかも
しれない
ジャア
ナンデワレテルノ
ママとパパに
褒められた
偉いわねって
ちゃんと言われた事
できたわねって
だけど
ねぇママ
流れてるの
止まらないの
そしたら
ママとパパが
良く分からない事
を言ったわ
それは透明?
それとも赫い?
分からないから
部屋に戻ったの
だけどやっぱり
そこには
クマさんも
ウサギさんも
いないのね
今私の側には
紙で造った
黒ネコさんが
手首のキズに
キスしてくれるのです
キスしてくれるのです