詩人:甘味亭 真朱麻呂
冬になれば
夏の暑さを恋しがり
夏になればなったで
冬の寒さを恋しがる
人の心や気持ちはつまるところ落ち着きがない気ままな旅人とおなじです
だから僕は
決めたのです
好きな季節
決まらないなら
どうせなら全ての季節を好きになればいいと
いつも大好きで
いつも素敵なその季節その季節にしかない光に出逢いたいから
僕にはどんな季節だって隔たりもかわりもない大好きな季節です
おなじくらいの愛情を向けている
僕との誰かさんの意見は違うだろう
それでも僕にとっての大好きな季節は全ての季節で
一つなんて選べやしないのさ
思い出が春夏秋冬全ての季節であふれているから欲張りだなんていわれても「あっそ」くらいですますだろう
大好きな季節はずっとずっと僕の傍にあるから僕から離れることもなくいつまでもほら目を開ければそこには何らかの季節が世界をあざやかに彩っている
ならばいまはどんな季節だろう?
暑いから夏かな…
なんて毎年思うかな
おなじ喜び おなじ切なさだけではままならない
めぐる季節はおなじでも削れた命と削れた時間で見る季節は気持ちからして見違えるほどに変わって見える
ほら こんなに
こんなにも
僕は季節とともに歳をとったから季節にもほら老いが見える
視界にもしわが寄る
それでも大好きな季節にはかわりないから大好きな季節よ
いつまでも傍でそのあざやかさを披露してください
僕は誰かに
見えない壁の向こうに
祈りをなげた
いつも大好きな季節がいつも傍にある幸せ なんて当たり前な幸せ
そしてやがていつか時が来れば終わる自然さがなぜにこうにも悲しく切ないのだろう
そしてなぜその悲しさや切なさには絶え間ないやさしさが吹くのだろう
僕はただ流れる景色の中その答を探し、ただ僕は生きる為生きているのだ。