詩人:高級スプーン
もう冬なのに
うしろで
セミが鳴いている
よく晴れた夜に
うるさいのは御免だ
月がうらやましい
隠れていても
慕われていて
それに今だって
誰かに
想われているんだろ
ぼくは
自ら輝けないし
スポットライトを
浴びた時だって
たいして
目立たなかったし
だから夜な夜な
ぼくはでかける
彼女を置いて
外へでかけた
死ぬほどに
生き抜いて
平然と今日がある
信じた偽りの
真実に気付いても
ぼくはこうして
月を見ている
赤の他人が
うらやましくて
とてもうらやましくて
ニセモノにすら
なれない自分に
嫌気がさして
そらに
身を投げそうになる
グッと堪えたら
やっぱりな
やってきた
くやしさはいつも
後からじゃないと
込み上げてこない
急に
月が一つ増えた
きっと
錯覚なんだろう