詩人:剛田奇作
痛みと愛の境界線に立って
カミソリを右手に
一人で
美味しいうどんを
食べに行こうって 思った雨の日
歯磨きして
白い気に入ってるシャツを着る
「ねえ、君の子供、おろしたくないよ」
雨の中でアジサイって、
ないてるのかな? それとも笑ってるかな?
君はどう 答えたんだろう
なにもかも忘れてしまうことが正解?
出会ったあの日の
君の、
運転する横顔
長い睫毛
大きな瞳の、まばたき
綺麗だっていうと照れるなんて 笑う
照れると困ったように 下を向いたね
進む時間はゆっくりしてて
君と過ごした
ほんの僅かの時間は
まるで日本じゃないみたいだった
優しい時間が 流れて
懐かしいような音楽の中で
きっと離れてしまっても
この瞬間は 永遠なんだって
10代の頃のように本気で感じた
目を閉じたら
いつでも
あの日に帰れる
毎日でも 手を繋いで 眠れる
「ねえ もしだよ?」
君は男の子なのに、
女の子みたいな質問ばかり
「もしだよ」
私からはいえなかったよ
だって私はもう大人だもの
でも「もしね、」そう
言えたら 良かったのかもね
今もあの日の君と私は
愛しさを伝え合うみたいに
見つめあってるよ
瞼の中で
ここにはいない
どこかの私は
君の子を抱いて 微笑んでいる