詩人:どるとる
自殺をしようとする
その人の背中を見ても僕にはわからない
その人の心にはなれない
人を殺める誰かの背中を見たって僕には何も見えません
たくさんの人、人、人 腐るほどいるけれど 僕は少しでもそんな人たちの中で
何かができているんだろうか
意味のないことだとわかってても
誰かを思いながら
無意味なことだとわ知っていても
誰かを気遣いながら
自分の小ささに気づいても 命の儚さ思い知らされても
消えていくその命の背中を見送る時
僕はやっと気づくだろう
ああ その人のいた意味がなんとなく見えるだろう
あなたの背中に 見えるたくさんの今までやこれからを
映したような物語 どんな背中にもある生まれている形のない荷物
誰もが背負いながら
気づかずに 僕は見ているんだな その人の傷跡や苦労を
それでも、あなたの背中には 僕が見えている以上の悲しみがあり喜びがあり
そして誰もわからないあなただけの痛みがあるのだろう
原稿用紙に どれだけ言葉を書いても見えてはこない
痛みが 苦しみが 喜びが 幸せが
その背中にはあるのだろう
だけれど僕はわかっていながら それを見て見ぬふりで通り過ぎる
すれ違う人、たまたま隣になっただけの人
その全てのあなたの背中に映る世界が誰も誰一人重ならないその人だけの今を
僕が知ることはできない
だからわかっていても目をそらすのさ
そこに例え愛や友情が あったとしても
越えられぬ壁が立ちはだかる
だから僕は一歩、距離をあけて人と並ぶ
そうやって生きるから見えないものもまだ消えない
だけれど遠目からでもわかる あなたの背中には見えない傷跡が 伝わらない痛みがあることも
だから時には突き放して 目をそらして
僕は僕 君は君 あなたはあなただと言い放つのさ。