詩人:どるとる
眠れない夜がある
誰にでも
忘れられない夜や
消しされない
夜がある
覚えているような
覚えていないような
おぼろげな記憶の彼方に涙が光る
残されたもの
消えてったもの
どちらにも
そんな夜があっただろう
背中合わせの二人は口下手で何も話さないうちから 感覚だけで幸せになれた
時々ぬくもりを確かめるためだけに互いを求めていた
あいた穴を埋めるようにほつれを縫うように
僕らは愛していた
夜にさえ 光がある
朝にさえ 闇がある
彼方まで世界
彼方まで宇宙
手に届く場所にある
悲しみ喜び憎しみ
だいたいこれくらいの夢 これくらいの心 見えないものにも想像で形や大きさを定める
このままのまま
彼方までさみしさ
彼方まで煩わしさ
背伸びしてやっと届くくらいの明日
僕らはくり返す
取り返しては
奪われる時間を
そして世界は
やがて海の中
大きな水たまりが広がって 僕は笑顔だけでは強がれない
だから夜の彼方で
ひとり泣くのさ
背中向けたまま
心持て余すように
朝がきたって
関係ない
太陽さえ見えない
陽射しさえ冷たい
晴れだって雨降りだ
誰でもそんな
気持ちになる
生きるとは
それほど散らかるものだ。