詩人:高級スプーン
一年で一番
忙しくなる日が
やって来た
あのオッサンにも
サンタ服を着せてやる
鶏達にとっては
悪魔の笑顔を
浮かべるオッサン
年間
何十万何百万もの鶏が
人の手によって
殺害されて
捌かれ
分けられて
粉をつけられ
揚げられ食われる
大人も子供も
人間達は皆
笑顔になります
ごちそうさん
俺達の給料になります
ありがと鶏さん
などと
感謝する間もなく
朝から晩まで働くのだ
彼女や彼氏が居るヤツは
皆休みやがって
何の予定もない俺は
ひたすら鶏を揚げまくる
そして時々
あの娘をチラ見
パンにチキンを挟んでね
ポテトや
コールスローも付けてね
どうでござんしょ
みたいなね
可愛いスマイル無料です
あっそりゃ
敵の売り文句か
たぶんあの娘にゃ
彼氏は居ないようで
今日もラストまで
俺もラストまで
仕事は
しんどいだけだけど
あの娘と一緒なら
頑張れる
ニヤニヤせんと
手動かせや
怒鳴ったのはクソ店長
言われなくても
動かしてるから
と心で叫び
スミマセンと
謝ったのは
チキンリトルな
俺でした
そんなこんなで
鶏を売りまくり
あっという間に
一日が終わる
片付けをして
さぁ帰りましょ
待ってました
待ってくれよと
あの娘に声かけようと
近付く俺
終電まで飲みませんか
って声かけようとしたら
クソ店長が
あの娘の肩に
手をかけて
じゃあ行こうか
と一言
きゃあセクハラ
とは言わず
ハイとスマイル一つ
二つ返事を返すあの娘
えっ
えぇっ
んなアホなっ
清しこの夜
聖なる夜に
今年もやっぱり
俺は一人
心にはスノーマン
やっぱり
あのオッサンは笑ってる
俺も笑った
そして走った
走りながら叫んだ
クリスマスなんて
鶏だけ食ってろ
バカぁっ
街角にはラブホテル
君は夜更けすぎに
店長の胸の中
きっと君は抱かれる
幸せなクリスマスです
俺は泣いた
ロンリーナイト
達郎のバカぁっ
山下さんは関係なかった