詩人:どるとる
小さな蕾の中に
一年ぶんの悲しみが
一年ぶんの喜びが
いつもの道の途中
色んな人の人生が
色んな人の涙や笑顔が
水たまりに映る今日
小さな虹をつくった雨上がりの街
駅の側立てかけられたさび付いた自転車に僕を重ねた
すっかり色あせて
勤めを果たしたような姿に
膨らんだ蕾は 春を待っているのに 僕の瞳には光はないよ
夕暮れ 赤茶けた空に 明日を思い描いても笑顔ひとつ浮かべられないんだ
一輪の花の僕は 降りる駅を知っている だけど降りなかった
白い雪に埋もれたり 雨に濡れてみたけれど答えは見つからなかったんだ
春を待つ蕾は 花を咲かすためにあるのに
僕は咲かした花を枯らしてしまったのさ
知っているんだ僕は
知りすぎているくらいに
それでも きれいにあなたの瞳に映れない
浮かない顔をしたままうなだれているよ
あなたは知っているのか?僕の何を
後ろ向いたまま 萎れたように夜に紛れて
届かない何かを 掴めない何かを
追いかけて たどり着いた明日には
誰も知らない虹が架かる そして朝日が照らした世界には希望はあるだろうか
神様のいない世界では僕らだけが全てで
春を待つ蕾は何もいわずに時に花を咲かさぬまま散る
僕は相変わらず
曖昧な日々を暮らす
昨日と今日を行ったり来たりして たどり着けない明日を探す
動かない時計の中
モノクロの冬の中
泡沫の夢の中
こたつに隠れては
窓の外の世界に
憧れる猫。