詩人:ハト
カーテンを閉めても
じわりと染み込んできて
爪先から
私を冷やしてゆく
あの娘の悲しみにも似た
こんな夜にはこころもとない
あなたの慰めの言葉
それは空気に触れた
その瞬間から劣化して
受けとる頃には崩れ去る寸前
大事なことは
軽々しく口に出してはいけないのよ
そういうこともある
あの娘の悲しみにも似た
ああ、雪が降っている
すべての音を飲み込んで
まるで自ら発光しているような
そんな夜
私は一人
羽布団にくるまってはただ
降ってくる悲しみに耳を澄ましている
冷えた爪先を
これ以上冷やさぬように
自らの体温で暖めた褥に横臥している
誰かが付けた轍の跡を辿れば
あなたの真意は見えるのだろうか
この小石を
あなたに向かって転がせば
今度こそあなたは
気付いてくれるのだろうか
この美しい夜は
どうして
美しいだけでは済ましてくれないのだろう
私たちの気持ちなど頓着せず
音すら立てずに
当たり前の顔をして
ただ降り積もり
積み重なってゆく
カーテンは閉めてあるのに
何故かしらね、分かってしまうの
朝起きたら
写真を撮りに行こう
暖かい格好をして
この部屋から出てみよう
誰かが付けた轍の跡を辿って
きっと昨日と変わらない
あの美しい景色を見に行こう
自分の足で踏みしめながら
きっと昨日と変わらない
白く眩しく輝いている
この世界を見に行こう