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詩人:夜深
雨は詩人になりたかった
空仰ぎ めくるめく風を感じたかった
だけど雨は 降り続くだけ
あてどない涙を流すだけ
ねえ 僕は本当にこのままでいいのかな
ずっと考えてきたよ
僕が今 土砂降りの雨を降らせて
地面の奥底で震えている新芽たちを
ぐんぐん ぐんぐん
あの高い空まで伸ばせたら…ってね
雨は詩人になりたかった
晴れ渡る世界中に注ぐ これっぽちの
言葉のつぶを ていねいに掬いとりたかった
だけど雨は やんでしまうと
もう 用なし 仕方のないこと
雨は降って 降って 降って
明日へ届け 僕のつくった虹の歌
ねえ 僕は本当に詩人なのか?
木霊たちよ 教えてくれよ
ねえ 僕は本当に詩人なのか?
子供たちよ 笑いかけてくれよ
僕は知っていた
雨は降り続くだけの ただの
邪魔者 あるいは 幸せ者だっていうことを
雨は詩人になりたかった
風を歌い 野原駆けて 雲の調べに聴き入って
やがて 眠りこけてしまいたかった
雨は詩人になりたかった
どこにも行くあてのない歌唄いは
今日も 言葉の雨を降らせるだけ
雨は詩人になりたかった
雨の歌を歌いたかった
雨の日に叫びたかった
雨は 雨は 雨は
神様の涙だから詩人にはなれやしなかった