詩人:右色
語れるものなどモノの数ではない
真に恐怖という言葉を必要とするのは
何一つ語れないものに他ならない
誰にも語れず
誰にも理解されない
そういう恐怖はじくじくと大きくなり
何も分からなくて
だからとても暗くて
無目的の焚き火を始める
大切だった目標や夢なんてものを薪にして
どんどん燃やす
『とりあえず』
言葉にすればそういう名前の炎がある内は安心できる
だから手当たり次第何でも薪にする
大事にしてたもの程よく燃えた
やがて
焚き火の炎が消えた日
恐怖は名前を得て
恐怖ではなくなった
暗闇が晴れたその場所には
もはや一つ存在していなかった
理解は容易で
大切なものがあったから恐怖があって
それがなくなれば恐怖もまた消えた
涙は無い
それも燃やしてしまった
これで結末ならまだ良かった
しかし私は五体満足無事に焼け残ってしまった
とてもとても
面倒な話だが
この空っぽの部屋にまた色々なもので満たさねばならない
まずは、そう椅子がいい
私を灰の山から引き上げた
あの人とゆっくりと語らう為に
まずはとても素敵な椅子を探すことにしよう