詩人:しゅんすけ
パチリとライトのスイッチをOFFにしたのは
たばこに火を点け終わったからだった
ベランダの床はまだ太陽の痕跡を消しきれず
髪の毛を乾かすために首から下げたタオルは
自然と額の汗に汚染された
家族の眠る寝室に通じる大窓に向き直り
手摺に体重を預ける
頭を後に傾けると目の前には星空が広がる
明日は晴れそうだ
ぽつり呟いて
天まで届けよとまっすぐに煙を吐きつけた
その刹那
弱々しく光を発する虫がベランダの隅に迷いこむのが見えた
生温いコンクリートの床に這いつくばると
その光りはなお弱く衰えた
左手に持ったままのたばこは気がつけば
もうすぐフィルターを焼こうかとしている
お前の命とどちらが先に消えるのか?
問いかけに答えるように
一瞬
強く
美しく
哀しく光って
その虫は死んだ
俺はなぜだか悲しくなって
タバコを強く吸い付け
フィルターの焼ける臭いにむせた
もう一度だけ
星空を見上げたが
さっきの虫ほど輝いた星はなかった
音をたてないように寝室の戸を開けたとき
何時まで続くのかなと
そう思った
その頃には
明日の天気などどうでもよくなっていた